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消費者大会

第57回北海道消費者大会 2020年11月20日

 北海道消費者大会は、年に一度、道内の66消費者協会が集う大会です。今年度で57回目を迎え、今回のテーマは「コロナ時代のくらし方」です。新型コロナは、21世紀に生きる人類にさまざまな警鐘を鳴らしています。過密の中で生きる都市型生活の危うさ、医療や福祉の危うさ、マスク不足問題に見る工業生産や食糧生産の海外依存の危うさ、こうした危うさにどう向き合っていくのか。コロナ時代の新しい生活様式を、ともに考えることが、今年の消費者大会の意義です。今回はコロナ禍ということもあり、基調講演やパネルディスカッションは集会型ではなく、初めての試みとなるWeb型で開催しました。大会の概要はこのホームページでご覧ください。

1.会長挨拶

北海道消費者協会会長 畠山 京子 氏  第57回北海道消費者大会は、新型コロナウイルス感染防止のため、このようにWeb開催となりました。今年度の大会テーマは、新型コロナウイルスの感染が続いている現状を踏まえ、「コロナ時代の暮らし方」としました。自粛生活が長く続いておりますが、一向に収束の目途が立たず、この状態はまだまだ続くものと思われます。

 誰もが初めて経験する新型コロナウイルスですが、ウイルスが出現した原因については、熱帯林の乱開発や野生生物の取引の拡大により、野生動物と人との接触が増えたことによるのではということが、多く指摘されております。また、経済のグローバル化が進み、人やモノの長距離・大移動が盛んになったことも世界中に感染が広まった原因と言われています。

 日本は戦後から今日まで一貫して経済優先で走ってきました。そのため食料を始め、エネルギー資源や多くの物資を外国からの輸入依存でやってきました。
 しかし、このコロナが世界中に広まったことにより、外国からの物資の供給に不安が生じ、輸入依存の日本経済の脆さが露呈し、それに危機感を持った人は少なくないのではないでしょうか。

 また、このコロナにより感染を防ぐための人々の生活スタイルの変化により、事業が立ち行かなくなった業種が出て、生活困窮に陥った方も多く出ています。しかしこれは自助努力の及ばない問題です。私たちは消費税制の下、収入の有無に関係なく皆、税金を払っています。このような非常時にはまず「国民の命と暮らしを守る」ことを第一優先として、困窮者には漏れのない直接的支援に税金を投入してもらいたいと思う次第です。

 そしてこの約10ヶ月間に、社会に様々なことが起きました。コロナ禍に便乗しての詐欺の横行、学校の長期にわたる休校、職場の時差出勤やテレワークの実施、非感染者による感染者やその家族への心無い言葉の投げかけも起きました。
 これからまだ長い期間、コロナと付き合わなければならないこのコロナ時代を、私たちはどう暮らしていくか、またどのような社会にしたいか、そのようなことをこの大会で考えていきたいと思います。  どうぞ皆様、最後までお付き合いくださいますようお願い申し上げ、大会のご挨拶といたします。

●大会長挨拶(3分53秒)

2.来賓挨拶

北海道知事 鈴木 直道 氏

北海道知事 鈴木 直道 氏  「第57回北海道消費者大会」が、「新北海道スタイル」を実践いただき、インターネットなどを活用し、「コロナ時代の暮らし方」をテーマとして開催されることを、心からお祝い申し上げます。

 一般社団法人北海道消費者協会及び道内各地域の消費者協会の皆様におかれましては、日頃より、住民の方への普及啓発など、消費者の視点で道民の安心な暮らしを守るため、精力的に活動を展開されており、消費者への啓発や消費者被害の防止などに大きな成果を挙げてこられました。
 畠山会長をはじめ、関係の皆様のこれまでのご尽力に対し、深く敬意を表します。

 現在、道では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、北海道消費者協会をはじめ多くの方々のご協力をいただき、感染拡大防止と、社会経済活動の両立を図る「新北海道スタイル」を推進しています。こうした中、マスクなどの通信販売に関するトラブルや各種給付金詐欺と考えられる事例などが発生しており、消費者被害防止に向けた普及啓発や消費生活相談体制の充実・強化の必要性はより高まっているものと考えています。
 また、高齢者の消費者被害の増加に加え、今後予定される成年年齢の引下げに伴い、社会経験の乏しい新成人が悪質商法の標的にされることも懸念され、幅広い年代に向けた、消費者教育も引き続き課題となっています。

 道では、今年4月に改定した新しい消費生活基本計画のもと、高齢者の消費者被害防止、若年者への消費者教育、さらにはSDGsの達成に向けた取組の推進による、誰一人取り残さない持続可能な社会、「消費者市民社会」の実現など、消費者の視点に立った施策に取り組んでまいりますので、引き続きご理解とご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。

 結びに、一般社団法人北海道消費者協会と各地域の消費者協会のますますのご発展と皆様のご活躍を祈念し、お祝いのことばといたします。

令和2年11月5日 

北海道議会議長 村田 憲俊 氏

北海道議会議長 村田 憲俊 氏  「第57回北海道消費者大会」の開催にあたり、北海道議会を代表いたしまして、一言ごあいさつ申し上げます。

 北海道内の消費者協会が一堂に会する本大会が回を重ね、今年はインターネットを活用した新しい形式での開催ではありますが、57回目を迎えられましたことを、心からお喜び申し上げます。
 皆様におかれましては、日ごろから、消費生活に関する普及啓発や相談業務などを通じ、道民生活の安定と向上に尽力されていることに対し、深く敬意を表します。

 さて、消費者協会の皆様は、発足以来、消費者の目線やニーズに対応した業務に取り組んでこられました。
 昨今は、悪質商法の複雑化や高齢者を狙う特殊詐欺の巧妙化が進む一方、商品やサービスに環境への配慮が求められるなど、消費生活を取り巻く課題は多様化しています。

 また、今年度上半期は、コロナ禍による自粛生活などのため、ネット通販トラブルや、経済的な困窮による消費生活相談が増え、その件数が前年の3割増しとなっていると伺いました。

 改めて貴協会が果たす役割の重要性を認識するとともに、今後も皆様一体となって、消費者被害の防止をはじめ、安心・安全な消費者生活の向上のため、益々、ご活躍されるようご期待申し上げる次第です。

 道議会といたしましても、国や道はもとより、「北海道消費者協会」をはじめとする関係機関と、より密接な連携を図りながら、道民の皆様が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、最善の努力を重ねて参りたいと考えておりますので、皆様におかれましても、引き続きご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

 結びに、本大会における基調講演や、パネリストの皆さんの活発な意見交換により、多くの成果が得られますことをご期待申し上げますとともに、北海道消費者協会の益々のご発展と、ご参会の皆様のご健勝、ご活躍を心から祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

3.基調講演①

講師のご紹介

第一生命経済研究所 宮木 由貴子氏  第一生命経済研究所
 ライフデザイン研究部 部長兼主席研究員
 宮木 由貴子氏

 社会の変化や生活の多様化による消費スタイル・消費者意識の変化やコミュニケーションの課題などの研究に従事するほか、これらの知見を活かし、自動運転の普及に向けた社会的受容性の醸成に向け、内閣官房・内閣府・経済産業省・国土交通省などの委員会委員を歴任。令和2年度消費者支援功労者表彰「内閣府特命担当大臣表彰」受賞。
 慶応義塾大学総合政策学部卒。

 著書に『人生100年時代の「幸せ戦略」』 (共著、東洋経済新報社 2019年) 『「人生100年時代」のライフデザイン 団塊ジュニア世代から読み解く日本の未来』 (共著、東洋経済新報社 2017年) など。
 一般社団法人日本ヒーブ協議会 第38・39期代表理事(2016年・2017年度)。

基調講演動画

●コロナ時代と消費社会-これからの消費者と消費社会のあり方を考える-
 (Short Ver.)(17分16秒)

1.いまどきの消費者~消費者はどう変わってきたのか
 この十数年で消費者を取り巻く環境は大きく変わりました。まずは消費に関する情報や情報源が多様化したこと。新聞やテレビといったマスメディアから得ていた情報がインターネットの普及によって大きく変わりました。最大の変化は、個人が不特定多数に向けて情報発信できるようになったこと。例えば個人の体験や感覚、意見といったものを容易に得ることができるようになりました。
 情報化に伴いネット売買の割合が高まったことも大きな変化です。消費者は海外を含む多様な市場から自分がほしいものを見つけられるようになりました。買う側だった消費者が自分のものを売る側に回るようになったことも大きな変化です。
 消費者の購買チャンスは格段に増加し、購買スタイルも変化しました。ネットでの売買は、情報がない、買いに行けない、店舗にないなどの理由で買えなかった人の環境を変え、中古市場には一般人が容易にアクセスできるようになったことで購入価格を抑え、通常の市場に出回らなかったものが探せるようになりました。C to C、消費者間取引といった形で、消費者同士が簡単に取引できることもネットの普及によるところが大きいでしょう。
 消費者行政もこの十数年で大きく変化しました。弱い消費者を保護するスタンスから消費者の自立を促す姿勢に転換したことに加え、消費者思考経営を推進するなど、良い企業の育成にも力を入れるようになりました。消費者と企業が、同じ方向を向いて消費社会が目指されるようになりました。
 今後の生活に関するアンケート調査をみると、子どもの教育費を除けば若い世代から50代にかけて経済的な不安が高く、収入が十分でないことは20代、30代で不安が高い。老後に必要な生活費が不足することについては女性の30代、40代がピークとなり、8割以上が不安だと回答しています。人生100年時代の残りがまだ60年、70年もある若い世代が老後を心配している、それが日本の現実です。老後の不安を反映し、今後増やしたい支出項目として貯蓄など財産づくりをあげる人が多い。
 こうした環境の変化と経済不安からいまどきの消費者意識をまとめました。まずは経済的不安から貯蓄に積極的です。言い換えれば消費に慎重で、消費で失敗するのは自分の情報収集能力、分析能力の低さととらえられかねないので、まとまった金額のものを購入するには慎重になる傾向にあります。例えば、値の張る耐久消費財を購入するとします。まずはネットで検索し種類、機能を絞り込む、価格帯から予算内のものに絞り、口コミでユーザー評価を調べ、店頭に見にいくこともある。多大なプロセスと情報の処理に疲れてきます。そもそも人間は選択肢が多いと選ぶのをやめる習性があります。選択肢が多いことは消費者にとって幸せに思われますが、多大なストレスになり、決定を回避したり、現状維持したりという選択もあるのです。
 買いにくくなったのは、消費における「べき論」がなくなったことにもよります。これまで車など当たり前に購入していたことを見直すようになり、必要なければ買わなくなりました。自分の価値観で消費の判断をするようになると、消費の常識が常識でなくなります。若者の「~離れ」。消費にこだわりがある人ほど共感、納得するものを買う傾向にあり、「べき論」で買う時代でなくなると明確な必要性が重要で、プチ贅沢など明確な理由、大義を求めます。頑張ったからご褒美としてなど、理由づけすることで消費行動を後押しします。
 セクション1のポイントです。消費環境の多様化と選択肢の増加によって安くて品質がいいだけでは評価されなくなってきました。消費者は買う理由や選ぶ理由を求め、良い消費、他者や未来を考えた行動志向に移りつつあります。共有された基準上での勝ち組から自分が決める基準上での価値組へ消費スタイルを転換していくことが求められています。

2.倫理的消費=エシカル消費とは何か
 2015年、消費者庁に倫理的消費調査研究会が発足しました。消費者基本計画における倫理的消費の定義は、地域の活性化や雇用も含む人や社会、環境に配慮した消費行動とされています。2011年の東日本大震災後、応援支援消費が定着し、買うことが支援につながる、ということが意識されました。日本ではエシカル(倫理)消費の認知度は極めて低く、何をもって倫理的と言えるのか。私なりの解釈として、これまで価値基準は利己でしたが、今後、エシカルという考え方でいけば、地球環境や社会貢献など広い視野での効用を追求する、価値基準が利己プラス利他、もしくは利己の範囲の拡大が重要になってきます。
 国連が示したSDGsは、17の目標と169のターゲットで成り立っています。エシカルの普及が進まない中でSDGsが広まったのは分かりやすさでしょう。消費者の行動を意識させるものが12番目の目標。作る責任、使う責任。消費者は事業者が売るから買うと言い、事業者は消費者が買うから売ると言います。どちらか、または双方が変わらなければ変わらない。9月に実施した第3回のコロナの調査で「消費者には将来の社会を考えて購入・利用する責任がある」を4択で聞きました。SDGsを意識した質問です。全体の6割強が「責任がある」と回答。ただし、明確に「当てはまる」は1割強で、多くが「どちらかというと当てはまる」でした。20代に「当てはまる」割合が高く、意識の高い人は若い人に多い。
 セクション2のまとめです。これからはいい消費とは何かを考え直す時代。今後必要とされるのは、消費者それぞれが自分の消費が社会や他者、環境などに与える影響を考えた上で社会的課題の解決を考慮したり、課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うことだと考えます。重要なのは一人ひとりの意識を高め、消費と社会がつながっていることを自覚して行動することだと考えます。

3.コロナは消費にどう影響したのか
 消費者意識の形成における留意点について考えます。1月15日に感染者が発生し、1月30日に10人目、2月13日に30人目、このとき国内初の死者が出て、2月29日に239人の感染者、その1カ月後に志村けんさんが死亡し、大きな衝撃が走りました。こうした中、3回にわたりコロナが消費にもたらした影響を調べました。1回目を緊急事態宣言発令直前の4月3日、2回目を宣言解除直後の5月15日、3回目を9月半ばに実施し、くらしや仕事、娯楽などさまざまな側面で自粛や制約を経験した人々の意識や行動はどう変わったのかを調査しました。
 インバウンドに頼る経済を脱却して日本人だけで経済が回るようにしようという意識が見られました。環境課題では、人間の環境破壊がコロナを生み、地球環境を不安定にしているという意識が高まりました。世界で同時発生したコロナにより、地球の一員であるという意識、消費が地球環境につながっていると認識する逆説的な動きもありました。国内の事業者や店舗を中心に支援消費や応援消費という動きもみられています。食品や日用品の自給率を高めようという意識は高く、多くの人が反グローバル、ナショナリズム的思考にシフトしました。
 セクション3のまとめです。多くの消費者が混乱に巻き込まれました。持続的な消費社会の構築に向けてあるべき意識の持ち方や行動を意識することが個人に求められています。消費者の倫理観や正義感は重要ですが、それだけでは逆行のリスクもあります。正しさや倫理は多様でそれだけで押し切ることはできません。自分の正しさの価値観にそぐわない行動や考え方に攻撃的になる傾向が散見されます。必要なのは他者への寛容さ、受け入れる気持ち。多様化する社会でSDGsを考えていくには自分と異なるものや理解できないものについては、背景などに思いをめぐらせる寛容さが重要になってきます。

4.これからの消費社会に向けて
 最後にこれからの消費社会のあり方についてまとめます。20世紀、私たちはよりよいものを求めて消費してきました。需要が供給力を上回っていました。活発な消費は豊かさでもあり、買えるということが自分の能力の表われでもありました。しかし現在は、供給力が需要を上回り、多くの選択肢が消費者を疲弊させています。消費者は選べなくなってきている。消費者が求めているのは、自分にとっての価値です。
 多くの企業が従来価値観に基づく企業活動を見直しています。幸せ視点の経営に舵を切り、社内にCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)などを配置し、客と従業員の幸せを実現するために自社の資源をどう活用できるかという視点で経営を見直す企業が増えています。そのためには異業種とつながり、組織視点ではなく人間視点で新しい価値を創造するつながり戦略も非常に有効です。こうした試みをしている企業は経営戦略としてさまざまな事業連携による新規価値創出をする、新たな活路を見いだしています。
 重要なコンセプトは「勝ち組競争」から「価値組共創」へのシフトです。限られたパイを奪い合って勝ち負けを競う関係から、価値を組み合わせて一緒に作るという考え方への転換です。企業同士のみならず消費者、行政、事業者が対話と連携によって消費社会を一緒につくることが重要になります。そのためには消費者自身も消し、費やす存在から脱却し、あるべき未来をイメージして検討に参加し、一緒にクリエイトする意識が求められます。消費者、行政、事業者が三位一体となって、あるべき未来を描いて共につくっていくために重要なのが対話であり、それを行う共創の場であると考えます。消費者団体や事業者団体は3者を有機的につないで相互理解を推進していくために重要な役割を担っています。
 セクション4のポイントです。消費者、行政、事業者が幸せという視点で人々のくらしを考え、「価値共創」の視点で消費社会をデザインする社会が、これからの消費者と消費社会のあり方を考えていく上で最も根幹に必要な視点だと考えています。

4.基調講演②

講師のご紹介

北海道新聞くらし報道部記者 佐竹 直子氏  北海道新聞くらし報道部記者
 佐竹 直子氏

 1966年、釧路市生まれ。藤女子大学英文学科卒業。日本電信電話株式会社(NTT)、NHK釧路放送局、釧路新聞社を経て2006年から北海道新聞釧路報道部で勤務。元漁労長らの半世を通し北洋漁業全盛期をたどった連載「海を拓いた男たち」(全34回)、釧路湿原を国立公園に導いた人々の足取りを追った連載「不毛の大地 母なる大地」(全58回)などを執筆。 戦時下に作文教育に励んだ道内の教員たちが治安維持法違反容疑で逮捕された北海道綴方教育連盟事件の実像を追った連載「獄中メモは問う 北海道綴方教育連盟事件」(全31回)で、2015年度日本ジャーナリスト会議賞受賞。道新選書「獄中メモは問う 作文教育が罪にされた時代」(北海道新聞社刊)で第29回地方出版文化功労賞受賞。2019年7月より北海道新聞くらし報道部記者。消費生活などを担当。

基調講演動画

●コロナとともに-道民の新しいくらし方-(42分52秒)

 報道の仕事に携わり30年近く。今年は思いがけない展開となりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人が距離を置くという思いがけない変化を迎えたからです。この間、私たちはどういうくらしをしてきたのか、新聞記事を通して振り返ります。

1.罵声や除菌スプレー浴びせる
 3~9月の社会面の記事で最も反響があったのは「コロナ犠牲の父 ひつぎ越し抱く」でした。その女性は、父親の感染を疑ったが、すぐに検査をしてもらえず、入院してからは職場に風評被害がでていると言われて退職。父親と最後に会ったのが防護服での面会で、感染予防のため亡くなった父をひつぎ越しにしか抱けなかったという記事です。
 次の記事は「ごみ清掃員 いつか感染」。使用済みのマスクが入ったごみ袋が、しっかり縛られていないため散乱し、感染するのではとおびえているという記事です。もとをたどれば新型コロナの問題ではなく、鼻をかんだティッシュなどを分別せず無造作に捨てている問題がコロナで表面化しました。
 次の記事は「忙殺 罵声 涙の配達員」。これは外出自粛でネット通販、飲食のテイクアウトが進み、忙殺される配達員が、家にこもっている人のストレスのはけ口にされ、「ばい菌運ぶな」といった罵声や、除菌スプレーをかけられる二次被害で苦しめられていました。

2.手作りマスクおしゃれに楽しむ
 私たちがつくる「くらし面」は、どうコロナと闘い、どう生活していくかを報じてきました。読者モニターから反響のあった上位10本の記事をみると、消費者がどこに興味があるのか分かります。マスクに関する記事が5本入り、最も反響があったのは「手作りマスクお手軽に」で、マスクの型紙を載せたものです。掲載は4月、マスク不足の時期でした。ガーゼは目が粗いけど、何もしないよりいいと、マスクを作った人がたくさんいました。次は、夏向けの立体マスクの型紙を載せたもの。コンビニやドラッグストアには不織布のマスクが出回っていましたが、マスクに対する考えが変わり、「マスクを楽しみたい」と、思い思いのマスクを着けるようになったころです。冬の寒さ対策でスカーフやマフラーを楽しむように、マスクをおしゃれとして楽しんでもいいのかなと思います。

3.過度な消毒に苦しむ人がいる
 続いて「過剰消毒に苦しむMCS患者」です。MCSは化学物質過敏症のこと。空気中の化学物質が体内に入ると頭痛や皮膚炎、めまいが生じるというものです。芳香剤や消臭剤、制汗スプレーなどの香料で、ひどいと全身に力が入らず学校や会社に行けなくなる人もいます。アルコール消毒剤から出る化学物質に影響受け、発症する例が増えています。頭痛、めまい、動悸、鼻血、のどがピリピリ、目がチカチカ、鼻にツーンと刺激を感じる、咳が出るというのが初期症状です。消毒・除菌を機に体調が悪くなったのであれば、少し消毒剤をやめてみるのがいいと思います。記事では、地下鉄に乗った途端、消毒のアルコール臭で息苦しくなり、めまいで2日寝込んだ女性、公共施設にある消毒剤の近くを通っただけで頭痛や吐き気に襲われる人の体験談を交え、過度な消毒が与える影響を伝えました。
 感染予防の専門医は「感染者が出ていない空間であれば、手をしっかりせっけんで洗えば消毒に神経質になる必要はない。手洗いができない場合のみアルコール消毒を」と話し、適正、適量の消毒を呼び掛けています。
 バッグに小さな消毒剤を入れ、こまめに消毒している人もいます。あなたの横にいる人が化学物質過敏症かもしれません。コロナ禍を生き抜くには、コロナさえ防いでいればいいという考えではいけません。身近な人の体調やくらしの状況を理解することが求められます。それができなければ、コロナ対策に奮闘する医療従事者、感染者、その家族へのいじめや差別はなくならないでしょう。

4.新しい生き方を選べるチャンス
 ウイズコロナの新しいくらしとはどういうものでしょう。「画面越し自宅で乾杯」という記事はオンライン飲み会を紹介しています。お酒を飲まなくても画面越しで話をすることで交流になります。記事で紹介した人は、個人事業を株式会社にしようと思った矢先にコロナに見舞われて仕事が激減したそう。でも、オンライン飲み会を企画し、窮地に陥った個人事業主が集まって意見を交わす中でアイデアをもらったり、顧客を紹介してもらったりでき、今は全国の仲間とも意見交換しています。
 私も札幌で一人暮らしをし、コロナで仕事もオンライン取材が増え、家にこもることが多くなりました。気持ちが滅入り、不安定になっていたとき、SNSでやりとりしていた大学の先輩がオンライン飲み会を開いてくれました。サッカー部の先輩たちとは30年ぶりの再会で、多くの先輩に励まされました。コロナはつらく、悲しい出来事ではあるけれど、ちょっとだけくらしを見直す、人との付き合いを見直すことで新しい出会いや生き方を見つけ、前と違う、もうちょっと快適な生き方を選べるチャンスをもらったのかもしれません。

5.自粛長期化し「産後うつ」も
 別の記事は「産後うつ 気を付けて」。苦しむ人の中に妊産婦さんもいます。育児相談や乳幼児健診は、十分できなかった時もありました。気軽に相談できる場を失って、産後うつになるようです。筑波大学などの調査で、妊産婦のうつ傾向を調べたところ、北海道が高いと分かりました。北海道は全国に先駆け緊急事態宣言を出し、外出自粛期間が最も長かった地域です。それが妊産婦にも影響したと推測されます。助産師会の会長は、妊産婦は「あれもできない」と自分を責めるのではなく、「今日はこれができた」と毎日、自分にマルをあげてほしいと話していました。それがうつから抜け出す第一歩だと。ためこまずにだれかに相談する。周りが相談しやすい環境つくることも大事です。周囲に育児をしている人、妊産婦がいたら、ひと声かけてください。ちょっとした気配りが今必要です。それが新しい家族の絆、付き合い方を考えるきっかけになるはず。

6.高齢の母がスマホで若返り
 釧路に住む81歳の母とのLINEのやりとりを紹介します。コロナで会えない時期が長く続いたので、兄が母の携帯をガラケーからスマホに変え、LINEを教えたら、ビデオ通話ができるようになりました。私も「おはよう」「いってきます」といった一言を送るようになりました。母は若い人たちに教えてもらい、いつの間にかスタンプ(絵文字)を駆使するようになり、脳の活性化にもなっています。母と同年代のみなさんは、これを機に新しい波に乗って楽しむというのもコロナ禍の新しいくらしの一つかと思います。二次効果として母は20代の孫たちとの会話が増え、LINEのやり方、写真の送り方、スタンプとかをやりとりしているよう。以前より共通の話題ができ、母は若返りました。
 コロナで感染予防をしながらのくらしはまだまだ続きます。マスクをして距離を開けるという新しいくらしは続いても、心は離れることなく、沈みっぱなしでなく、楽しく生きるような新しいくらし方をみなさんと一緒に、紙面を通して探していけたらと思っています。

5.パネルディスカッション

 テーマ「コロナ時代のくらし方~どう向き合う、新しい生活様式~」

パネリストのご紹介

 北星学園大学 経済学部 1年
 阿部 舜平 氏

 モンゴルでの砂漠緑化ボランティアに参加したのをきっかけに環境問題に関心を持つ。北海道でもエゾシカによる環境問題があることを知り、札幌消費者協会北海道エゾシカクラブに入会。

北星学園大学 経済学部 1年 阿部 舜平 氏

美唄消費者協会 会長
坂本 忠幸 氏

美唄消費者協会 会長 坂本 忠幸 氏

上砂川消費者協会 副会長
吉田 智恵子 氏

上砂川消費者協会 副会長 吉田 智恵子 氏

士別消費者協会 会長
喜多 武彦 氏

士別消費者協会 会長 喜多 武彦 氏

中札内消費者協会 会長
仲沢 才子 氏

中札内消費者協会 会長 仲沢 才子 氏

帯広消費者協会 会長
村上 早苗 氏

帯広消費者協会 会長 村上 早苗 氏

コーディネーターのご紹介

北海道消費者協会 専務理事
武野 伸二

海道消費者協会 専務理事 武野 伸二 氏

パネルディスカッション動画

●テーマ1 身の回りの影響(16分32秒))

武野 新型コロナウイルスで社会は大混乱に陥った。いまだ出口は見えず、不安と不自由なくらしを強いられている。消費のトレンドが変わる一方、IT(情報技術)を活用した新たな知恵が生まれている。ウィズコロナの消費社会を考える場として今大会を位置づけた。新型コロナウイルスは、社会にさまざまな影を落としている。最初のテーマは、身の回りでどんな問題が見えたか。

仲沢 マスクや消毒剤が不足し、開店前から長蛇の列ができた。保育園や学校、学童保育の閉鎖で、共働き家庭は大変苦労した。行動制限がストレスになった。東京の取引先が在宅ワークに入り、従業員が感染したことで納品遅れや欠品が生じた。観光客相手の事業所は軒並み業績が悪化し、国の支援が遅れたため、中札内村は独自の休業支援金を支給したが、客足は戻っていない。

吉田 高齢の母親と暮らしているので、感染が怖く必要な買い物以外は今も外出しない。しかし、二人きりで家にいるとストレスを感じ、ショートステイやデイサービスを活用している。

喜多 仕事で学校に出入りしている。休校で全国的にオンライン対応が重要になったが、広域な士別は通信インフラが十分でない。教師の負担が重く、週1度の登校日に宿題を出すなど現場は混乱した。子どもが休むと、パートの母親は仕事を休まざるを得ない。士別市は独自に給付支援をした。消費者協会として困るのは、出前講座で自治会に出向き、コロナの詐欺被害対策をしようとしてもできないこと。

村上 コーラス活動は学校が練習場なので全面中止した。隣人との立ち話まで自粛なので、民生委員として見守ってきた一人暮らし情報も入らない。放課後支援の学童保育は1学年ごと最大30人とされ、学年ごとに毎回、清掃するのは大変な手間になる。担い手は感染が怖い高齢者ばかりで結局、中止にした。協会の活動が次々中止となり頭を痛めている。

坂本 入院しても面会できず、葬儀も終了してからの案内が相次いでいる。葬儀は10件ほど行ったが、会食がないとか、葬儀のあり方が変わり、葬儀会社は困っている。美唄ではホテルやコンビニが倒産し、商工会議所は、まだ倒産が続くと見ている。雇用が心配だ。

阿部 今年大学に入学した。想像した学生生活とは大きく異なっている。前期はオンライン講義ばかり。いつでも受講できるオンデマンド講義はつい忘れがち。後期も7割がオンライン講義だ。大学に行かないので友達は1人か2人、サークル活動も前期は中止だった。コロナが落ち着いたら変わってほしい。

●テーマ2 社会的な影響(18分49秒)

武野 新型コロナは、過密の中で生きる都市型生活の危うさや、医療や福祉の危うさ、マスク不足に見る海外依存の危うさを浮き彫りにした。次は社会的な打撃について聞きたい。

宮木 消費は混乱し、危機感が拡大した。デマや買いだめ、買い占めが横行し、多くの人が反グローバル、ナショナリズム的思考にシフトした。マスクや消毒液が店頭からなくなり、多くが海外で生産されていることを実感した。トイレットペーパーがなくなるというデマが広がり、実際に手に入らなくなった。国産品を求める消費者が増えた。3回のコロナ調査では「食料自給率を高めてほしい」が4月85.9%、5月87%と高く、9月に74%となった。多くの人が国内自給率を高めてほしい意向だった。「インバウンドに頼らない経済」が4月85.4%、5月82.7%と高く、9月は70%に下がった。短期ではなく、中長期的に考えていくのが大事。社会不安だけで動くのは危険だ。

佐竹 コロナのおかげで入院している家族と会えない人が今もたくさんいる。しかし今起きている問題は、コロナだから発生したのではなく、潜在していた問題がコロナで表面化したものが多い。例えば、親の介護や看病は、仕事があって大変だから「病院に入って」と言う。それがコロナによって、親と最後の時間をどう過ごすのか家族のあり方を考えるようになった。講演で紹介したごみ収集の清掃員が汚れたマスクからの感染に脅えている。もともと汚れたものをそのままごみ出しするのがよいことなのか。コロナをきっかけに身近な問題をもう一度考え直すチャンスをもらった気がする。

仲沢 中札内村から初期に感染者が出て、「子どもがいじめにあい、一家で村外に引っ越した」というデマが流れた。実際は普通にくらしていたが、個人が特定され大変な思いをしたと思う。卒業式や入学式、修学旅行などの学校行事は規模の縮小や計画の変更が相次ぎ、子どもたちがかわいそう。

阿部 友人の中には生活費を居酒屋やホテルのバイトで稼いできたのが、週4~5回のシフトが週1になったり、店自体が潰れたり、バイトをしたくてもできなくなっている。週1、2回の対面講義のため実家に戻れず、一人暮らしを続ける。コロナで希望の就職先がなくなり、学科変更したり、学科と関係ない職種を選んだりといった問題も起きている。

畠山 マスク不足になって初めてほとんどが海外生産だったことを知った人が多い。日本の食料自給率はエネルギー換算で38%しかない。食料はマスクのようにすぐに増産できない。穀物輸出国であるウクライナやロシアは自国のために輸出制限をかけた。日本は世界から食料を輸入している。それが途絶えたら大変だ。消費者協会は早くから地産地消を呼びかけ、食料自給率の向上を求めてきた。食料自給率についてもっと真剣に考えたい。また、コロナにより生活困窮者が増えた。自助努力には限界がある。命とくらしを守るため、もれのない生活支援をしていかなければならない。

宮木 私も食料自給率は上げていくべきだと思う。しかし、コロナなど一時的な要因で極端な対応をするのは危険だ。輸入を減らせば物価に反映する。中長期的な視点で、バランスを考えたい。

●テーマ3 消費行動・生活の変化(26分38秒)

武野 社会変化のトレンドは、新型コロナによって良くも悪くも大きく変わりつつある。身の回りの消費行動や生活はどう変わってきているか。

坂本 コロナ禍で経済的な二極分化が進んでいる。国産牛肉は特売でなければ買えない人が多くなっている。耐久消費財であれば、冷蔵庫なら買うときの初期投資が高いか安いか、1年間の電力消費はどうか、何年使ったら元がとれるか考えなくてはならないが、高齢者は(長期的な)賢い選択が難しくなっている。

仲沢 地方にいても格差が少ないデジタル化が進み、ネットビジネスの拡大で物流業界は拡大していくと思う。商店街ではキャッシュレス決済が浸透している。野球やコンサートなどのリモート観覧が進み、旅行も家にいながらネットで映像が楽しめる。中札内は自然が豊かでキャンプ場に村外から多くの人が来場し、入場制限までかかった。在宅ワークが進み、都市部からの移住も促進するのでは。

喜多 中札内と似たようなことを感じている。士別はサフォーク羊を活用した観光の来客が減り、代わってちょうど今夏から営業を始めたキャンプ場が、にわかキャンパーでにぎわった。ウィズコロナでは、時間の費やし方が大事になり、それを考えるいい機会になっている。

村上 IT技術が普及し、いろんなことができるようになる一方で、地域の特色が薄れる不安がある。個人の孤立も顕著になるのではと心配だ。

吉田 キャッシュレスやネット通販が増えてきた。便利だが、申し込みは電話ではなく、ネットだけとなると注文できない。手に取ってみることができないし、気に入らないとどう送り返すかも分からない。高齢者は適応できるのか

佐竹 キャッシュレスやスマホのIT技術を高齢者に伝える担い手が重要となる。確かにIT化で地域色が薄まる懸念はあろうが、東京に会社があっても在宅勤務で故郷に戻る若い世代が増えている。故郷や気に入った地方都市で、地域文化を体感し、中央に発信していく。最先端の仕事を地方都市でやっていく企業も増えていく。働き方改革に拍車をかけるのでは。

喜多 北海道は人口が減少しているが、土地と家はたくさんあり、自然災害も少ない方だ。コロナはピンチではあるが、移住促進のチャンスでもある。行政も就農者を促進するための施策や説明会をやっており、いつでも移住してほしいという姿勢でいる。

阿部 宅配サービスのウーバーイーツでハンバーガーを注文したら20~30分で到着し便利だった。知人にもバイトしている人がいる。増えていくのではないか。今までなかったオンラインイベントの案内も頻繁にSNSで流れてくる。リモート形式の交流会や勉強会が増え、興味ある講習会には参加している。

宮木 3~4月の消費行動は混乱を招いたが、五輪が中止となりコロナ禍が長期化する見通しになって、みなさん新しい生活を模索しようという気持ちが生じた。潜在していた問題が顕在化し、コロナをきっかけにポジティブな考えにしていこうとなっている。5~6月ころは経済活動との両立を強く意識するようになり、観光地に滞在しながら仕事をするという新しいスタイルも定着しつつある。応援消費というスタイルも増えている。クラウドファンディングや寄付という文化も広がっている。コロナの制約の中でもリモート飲み会など、コミュニケーションや楽しさを探る動きがある。マスクや消毒液がないことが日本の消費を考えるきっかけになるとすれば、この機会を十分に活用すべきだ。消費社会をどう変えていくのかという視点は重要であり、このコロナでただでは転ばないと考えたい。

●テーマ4 ニューノーマルの視点(16分37秒)

武野 新型コロナがもたらした負の側面は、簡単には消えないだろう。ニューノーマル(新しい生活様式)を築いていくには、どのような視点が必要か。

仲沢 巣ごもり生活で家庭での食事が増え、地産地消の安全な食材をネットで販売する社会がきた。一方で海外製品の入手が困難になっている。便利な半面、会話、コミュニケーション不足になりそうだ。自宅にいながら何でもできるかもしれないが、みんなと思い切りしゃべりたい。

坂本 身近で自殺した人がいる。健康不安もあったが、経済困窮があったと聞く。よく「成功例から学ぶ」というが、失敗した人は声が上げられない。どうして失敗したか、から学ぶことも必要だ。コロナで弱い人ほど苦境に陥っているので、そこを追求したい。人類の歴史は感染症との闘いでもある。困った人が声を上げられる社会を築きたい。

畠山 キャッシュレス決済が広がっている。国はインバウンド対策で普及しようとしたが、コロナによって広がった。ただ、使いすぎると家計破綻につながる。カード情報の流出も心配だ。1980年代にクレジットカードが出て、90年代に普及した。さらにサラ金ATMが乱立し、多重債務者の自殺が社会問題になった。食糧ばかりじゃなく、いろんなものが外国に依存している。わかりやすいのは衣類。以前から海外もの、特にファストファッションが多く出回っている。現地では安い賃金、劣悪な作業現場で仕事をしている。その商品が作られている背景も考えて何を買うかを決めるエシカル消費につなげたい。

佐竹 乳幼児を抱えた母親を取材する中で、子育て教室が制限され、行き場を失った母親が多くいる。相談相手がいない、不安に陥っている人が多い。ある統計では、北海道でうつ傾向にある妊産婦が全国一だという。距離を保たなければならないが、心まで離れず、苦境に陥っている人に気づいて声をかけるということも大切。コロナで問われるのは、自分が選んだものを買う、食べる、会いたい人に使う時間。こうした選択や、行動する理由を見つめ直す必要がある。それが持続的な環境保護などSDGsにつながっていくと思う。

宮木 正しさを正面からぶつけることによる攻撃性も今回のコロナで顕在化した。医療関係者らエッセンシャルワーカーに対する感謝の念を持つ人は多いが、逆にそういう人たちほど、ルールを守らない人への怒りは強い。ルールを守ろうとする人がストレスを抱え、自粛警察のような過度な行動につながっている。自分軸をしっかり持たないといけない。寛容さが大切だ。受け入れる気持ちを持っていないと、ニューノーマルには対応できない。

村上 本日の論議でも働く世代の視点が多い。現役を引退した人、高齢者への視点も必要だ。

●テーマ5 どんな社会にしたいか(20分55秒)

武野 最後は、現代社会の危うさを踏まえ、どういうウィズコロナ社会にしたいか、を聞きたい。

喜多 先のキャンプ場と合わせた農業体験を始めた。泊まった翌日に収穫体験などを行う。観光と移住につなげたいという思いがある。心のケアをしながらスローライフの楽しさを担う。日本の伝統意識として「向こう三軒両隣」文化がある。それぞれが手を取り合える社会ができればいい。

佐竹 以前取材した一人暮らしの高齢者が、フードバンクの食材を近所の同じような一人暮らしをしている人に配っていた。単にモノをあげたいのではなく、互いにやりとりできる関係になるのが狙い。待っているだけでなく、自分からつながる努力も必要だろう。「引きこもり」のような人と接するのが苦手な人たちが、コロナで目立たなくなり、同じように働けるチャンスでもある。コロナで生き方が変わり、新しい世界に踏み出すチャンスになるはずだ。

阿部 昨年、中国・内モンゴルの砂漠緑化ボランティアに参加した時、同行者からエゾシカ問題を聞き、シカ皮のケースを見せてもらった。すごくよかった。エゾシカ問題に貢献したいという気持ちになり、革加工を始めた。コロナになってからシカ皮のマスクもつくった。ネット販売したり、SNSで広めて、将来はエゾシカの総合商社を目指している。コロナで空いた時間を活用し、プログラミングなど将来、役立つ技術を習得している。予期せぬことが起きても悲観的にならず、時代に適応した力を身につけたい。

宮木 コロナは、健康はもちろん、人と人とのつながりを壊した。しかし、迂回路として人類はITを見つけた。これからは勝ち負けを競う「勝ち組競争」から、価値を組み合わせる「価値組み競争」の時代になる。社会課題とIT、自分の発想を組み合わせ、いろんな人、組織と新しい価値をつくっていく。分からなかったら聞けばいいし、手伝ってもらえばいい。つながりで発展していく社会を築きたい。

畠山 以前流行したサーズやマーズもコロナウイルスであり、今後も新しいコロナが出てくる可能性がある。これがグローバル社会、資本主義社会のリスクであれば、今一度立ち止まってこれでいいのか真剣に考える必要がある。コロナ前はSDGsや食品ロスに世界各国が取り組み始めたところだった。SDGsの17の目標のうち、貧困をなくす、飢餓をなくすという途上国への思いがある。先進国の過剰消費と途上国の飢餓が併存している。誰一人取り残さない。これを常に念頭においた社会、世界をつくれたらいいなと思う。SDGs、食品ロス、エシカル消費を広めたい。持続可能な社会を、将来を担う若い人たちに残していきたい。

武野 北大のある先生が「未来予測は簡単だ」と言っていた。なぜか。「望む未来は自分たちで創ればいい」ということ。新型コロナは大変な災厄をもたらした。しかし、長い目で見た時、不幸が幸せのきっかけになることがある。この災禍を契機に、今一度、くらしを見直し、よりよい未来につなげたい。

6.大会宣言

 第57回北海道消費者大会は、特別な大会となりました。新型コロナウイルスの感染拡大により、社会は混乱に陥り、いまだ出口は見えません。コロナと折り合う生活は、しばらく続くでしょう。こうした「withコロナ」の消費社会を考える場として今大会は「コロナ時代のくらし方」をテーマに掲げました。

 道内外の6会場をオンラインで結んだパネル討論では、感染防止のため周囲との交流が減り孤立しがちな状況や、経済格差が拡大する状況が報告されました。社会的には、供給不安による買いだめ・買占めや感染デマの拡散、さらには高齢者や子どもなどの弱者に、より辛く影響が及んでいる状況が語られました。

 しかし、実は私たちの社会が抱えていた暗部が、コロナによって一気に表面化しただけではないでしょうか。孤立、困窮、利己主義、デマ拡散、弱者切り捨てといった問題です。食料自給率の向上や地産地消と、反グローバリズムも語られました。極端に走ることなく、腰を落ち着けた論議が必要です。

 「望む未来は自分たちで創る」という気概が必要でしょう。そのために自分軸、寛容、エシカル消費といった言葉が語られました。コロナ禍は、立ち止まり、じっくり考える時間を与えてくれました。IT化の大波を避けることなく、「わからなければ聞く、教える」「つながる社会」の輪を広げていきましょう。

 コロナ問題とは別に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題は粘り強い注視が必要です。ゲノム編集技術応用食品は、安全性が未確認であり、表示の義務化を求め続けます。持続可能な社会を目指す中では、食品ロス問題やエシカル消費についても深く考え、2050年の脱炭素社会をみんなで実現しましょう。
2020年11月 

7.協賛団体名

協賛団体名

  • 一般社団法人 日本損害保険協会 北海道支部

協賛広告団体名

  • 一般社団法人 生命保険協会 札幌協会
  • 北海道米販売拡大委員会
  • 公益社団法人 北海道宅地建物取引業協会
  • コアレックス道栄株式会社
  • 北海道水産物加工協同組合連合会
  • 北海道農業協同組合中央会
  • 北海道生活協同組合連合会
  • 日本チェーンストア協会 北海道支部
  • 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 北海道支部
  • 一般社団法人 北海道LPガス協会
  • 北海道牛乳普及協会
  • 北海道生活衛生同業組合連合会
  • 北海道地区新聞公正取引協議会
  • 北海道中古自動車販売協会
  • 北海道電機商業組合
  • 一般社団法人 北海道乳業協会
  • 一般社団法人 北海道養豚生産者協会
  • よつ葉乳業株式会社
  • 石油連盟 北海道石油システムセンター

8.後援

  • 北海道